建設業許可の要件|専任技術者について徹底解説!
建設業の許可を申請したいけど、専任技術者の要件がややこしくて、わかりにくい…
どういう場合が専任技術者になれて、どんな書類を用意すればいいんだろう?
専任技術者の要件は、経営業務の管理責任者の要件と並んで、非常に重要です。
許可を取得できない場合の大半の原因が、これら二つの要件なので、ここでしっかりと確認しておきましょう!
また、要件を満たしていることを証明するための疎明資料は、どのケースで申請するかによってことなります。
その点についてもわかりやすく解説していきます!
専任技術者とは?
専任技術者は、建設業許可を受けるために必要な要素の一つであり、建設業法によってその資格と役割が定められています。
建設業法では、各営業所において専任技術者を配置することを義務付けており、これは建設業者が技術的な能力を有し、建設工事を適切に管理できることを保証するための重要な制度です。
専任技術者は、その資格を証明するために必要な技術及び経験を有する者として、建設工事の品質保証、安全管理、工程管理を適切に行う責任を担います。
専任技術者の法的要件
建設工事を適切に施行するために、営業を行う営業所においてその工事の専門の技術者が必要となります。
専任技術者になるためには、建設業における実務経験と所定学科を卒業(学歴)していること、資格免許等を取得していることが非常に重要です。
通常、専任技術者として認められるためには、特定の工事に関連する技術的な職務において、一定期間以上の実務経験が求められます。この経験期間は通常5年または10年とされています。
また、学歴については、高等学校を卒業した後、技術系の専門学校や大学で建設関連の学科を卒業していることが望ましいとされています。
特に、大学や専門学校で土木工学、建築学、環境工学などの学位を取得している場合、その専門知識が専任技術者としての資格要件を満たすのに役立ちます。
根拠法令に触れつつ、一つ一つ確認していきましょう。
一般建設業における専任技術者
まずは、根拠法令から確認しておきましょう。
条文を見てもわかりにくいかもしれませんが、以下のイ~ロのどれか一つに該当すれば、専任技術者としての要件を満たすことになります。
【根拠法令】一般建設業
第七条 国土交通大臣又は都道府県知事は、許可を受けようとする者が次に掲げる基準に適合していると認めるときでなければ、許可をしてはならない。
二 その営業所ごとに、次のいずれかに該当する者で専任のものを置く者であること。
イ 許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関し学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)による高等学校(旧中等学校令(昭和十八年勅令第三十六号)による実業学校を含む。第二十六条の七第一項第二号ロにおいて同じ。)若しくは中等教育学校を卒業した後五年以上又は同法による大学(旧大学令(大正七年勅令第三百八十八号)による大学を含む。同号ロにおいて同じ。)若しくは高等専門学校(旧専門学校令(明治三十六年勅令第六十一号)による専門学校を含む。同号ロにおいて同じ。)を卒業した(同法による専門職大学の前期課程を修了した場合を含む。)後三年以上実務の経験を有する者で在学中に国土交通省令で定める学科を修めたもの
ロ 許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関し十年以上実務の経験を有する者
ハ 国土交通大臣がイ又はロに掲げる者と同等以上の知識及び技術又は技能を有するものと認定した者
建設業法7条2号イロハ
※「専任のもの」とは、その営業所に常勤(テレワークを行う場合も含まれます)し、専らその職務に従事する者をいいます。
次のような人は「専任」に当たらないので注意が必要です。
・専任技術者となる者の住所が、勤務する営業所の所在地から著しく遠距離にあり、通勤することが到底不可能な場合
・他の営業所(自社だけでなく、他社の営業所も含みます)で、専任を求められている者
・建築士事務所を管理する建築士、専任の宅地建物取引士等他の法令により特定の事務所等において専任を要することとされている者(建設業において専任を要する営業所が他の法令により専任を要する事務所等と兼ねている場合においてその事務所等において専任を要する者を除く。)
・他に個人営業を行っている者、他の法人の常勤役員である者等他の営業等について専任に近い状態にあると認められる者
・当該法人の監査役である者
建設業法7条2号イについて
建設業法7条2号イに関して一言でまとめると、「学歴」+「実務経験」を合わせて要件を満たすケースです。
条文ではわかりにくいので、箇条書きにすると以下のようになります。
・学校教育法による高等学校(旧実業学校を含む)もしくは中等教育学校を卒業(学歴)後、5年以上の実務経験を有する
・学校教育法による専修学校の専門課程を卒業(学歴)後、5年以上の実務経験を有する
※「専門士」や「高度専門士」の称号を受けた人は、3年以上の実務経験で済みます。
・学校教育法による大学もしくは高等専門学校(旧専門学校を含む)を卒業(学歴)後、3年以上実務の経験を有する
・旧実業学校卒業程度検定規程による検定で一定の学科に合格(学歴)した後、5年以上実務の経験を有する
・専門学校卒業程度検定規程による検定で一定の学科に合格(学歴)した後、3年以上実務の経験を有する
上記の「学歴」を有する者をまとめて「所定学科卒業者等」と言いますが、許可を受けようとする業種に対応した学科、検定でなければならないので注意が必要です
下記の表の対応関係から、許可を受けたい業種に使える学科と検定がわかります。
所定学科表
許可を受けようとする業種 | 学科 |
土木工事業 舗装工事業 | 土木工学(農業土木、鉱山土木、森林土木、砂防、治山、緑地又は造園に関する学科を含む) 都市工学、衛生工学または交通工学に関する学科 |
建築工事業 大工工事業 ガラス工事業 内装仕上工事業 | 建築学または都市工学に関する学科 |
左官工事業 とび・土工工事業 石工事業 屋根工事業 タイル・れんが・ブロック工事業 塗装工事業 解体工事業 | 土木工学または建築学に関する学科 |
電気工事業 電気通信工事業 | 電気工学または電気通信工学に関する学科 |
管工事業 水道施設工事業 清掃施設工事業 | 土木工学、建築学、機械工学、都市工学または衛生工学に関する学科 |
鋼構造物工事業 鉄筋工事業 | 土木工学、建築学または機械工学に関する学科 |
しゅんせつ工事業 | 土木工学または機械工学に関する学科 |
板金工事業 | 建築学または機械工学に関する学科 |
防水工事業 | 土木工学または建築学に関する学科 |
機械器具設置工事業 消防施設工事業 | 建築学、機械工学または電気工学に関する学科 |
熱絶縁工事業 | 土木工学、建築学または機械工学に関する学科 |
造園工事業 | 土木工学、建築学、都市工学または林学に関する学科 |
さく井工事業 | 土木工学、鉱山学、機械工学または衛生工学に関する学科 |
建具工事業 | 建築学または機械工学に関する学科 |
※卒業された学校の課程・学科が、上記表の名称に当てはまらない場合は、事前に役所に相談をする必要があります。
検定品目と指定学科
検定種目 | 指定学科 |
土木施工管理、造園施工管理 | 土木工学 |
建築施工管理 | 建築学 |
電気工事施工管理 | 電気工学 |
管工事施工管理 | 機械工学 |
※上記検定種目(表の左)に係る一級の第一次検定または第二次検定に合格している場合、大学における指定学科(表の右)を卒業した場合と同様に、実務経験が3年以上で要件を満たします。
※上記検定種目(表の左)に係る二級の第一次検定または第二次検定に合格している場合、高校における指定学科(表の右)を卒業した場合と同様に、実務経験が5年以上で要件を満たします。
※ただし、「指定建設業」と「電気通信工事業」に関しては適用外となるので注意が必要です。
建設業法7条2号ロについて
建設業法7条2号イは一番わかりやすく、「10年以上の実務経験」のみで要件を満たすケースです。
一番わかりやすいのですが、実務経験が10年以上あることを証明するのが面倒なところが難点です。
また、専任技術者の項目で登場する「実務経験」とは、建設工事の施工に関する技術上のすべての職務経験をいいます。
したがって、ただ単に建設工事の雑務のみ(例えば、現場の掃除だけなど)の経験年数は含まれません。
例えば、建設工事の発注に当たって設計技術者として設計に従事し、または現場監督技術者として監督に従事した経験、見習い中の技術的経験等は実務経験として含まれます。
ここが経営業務の管理責任者との違いで、専任技術者には取締役などの経営者だけでなく従業員としての経験も含まれてきます。
また、実務経験の期間は「1業種につき10年以上必要」です。この「1業種につき」というのが重要です。
例えば、塗装工事と防水工事はわりと密接な工事なので、両方とも経験される場合が多いと思います。
申請する側からすると、「塗装も防水も10年で両方とも経験した」と言いたくなります。
しかし、あくまで「1業種につき10年以上必要」なので、専任技術者としての実務経験として認めてもらう場合、「塗装工事の実務経験としてなのか」、「防水工事の実務経験としてなのか」を選択しなければなりません。
仮にこの場合に「塗装」も「防水」も一人で専任技術者になりたいとすると、合計20年という期間が必要になります。
建設業法7条2号ハについて
建設業法7条2号ロでは、「国土交通大臣がイ又はロに掲げる者と同等以上の知識及び技術又は技能を有するものと認定した者」と規定していますが、これは要するに「資格」や「免許」のことを意味しています。
どの資格や免許を持っていると、どの業種の専任技術者になることができて、また実務経験が必要か不要かなど、すべて決められています。
これらは「建設業許可申請マニュアル」を見ていただくとわかります。見にくいかもしれませんが、表の形で掲載しておきます。
『滋賀県 建設業許可申請マニュアル』p22~p25から抜粋
繰り返しになりますが、取りたい業種に応じた資格を持っている必要があります。
また、資格によっては、3年以上または5年以上の実務経験が必要となります。
表中の記号の意味についてですが、以下でまとめておきます。解体工事業は少し特殊なので気を付ける必要があります。
・「◎」:特定建設業の専任技術者になれる資格等
・「〇」:一般建設業の専任技術者になれる資格等
・「☆」:合格後に3年以上の実務経験が必要となる資格等
・「△」:合格後に5年以上の実務経験が必要となる資格等
・「黒地の◎」と「黒地の〇」:平成27年度までに合格された方が対象で、解体工事に関する実務経験1年以上または登録解体工事講習の受講が必要です。
他にもたくさん注意事項があるので、手引きをしっかりと確認するようにしましょう。
特定建設業における専任技術者
特定建設業も根拠法令から確認しておきましょう。
先ほどまで見ていた7条2号イ~ハの規定とは少し違うので注意が必要です。
【根拠法令】特定建設業
第十五条 国土交通大臣又は都道府県知事は、特定建設業の許可を受けようとする者が次に掲げる基準に適合していると認めるときでなければ、許可をしてはならない。
二 その営業所ごとに次のいずれかに該当する者で専任のものを置く者であること。ただし、施工技術(設計図書に従つて建設工事を適正に実施するために必要な専門の知識及びその応用能力をいう。以下同じ。)の総合性、施工技術の普及状況その他の事情を考慮して政令で定める建設業(以下「指定建設業」という。)の許可を受けようとする者にあつては、その営業所ごとに置くべき専任の者は、イに該当する者又はハの規定により国土交通大臣がイに掲げる者と同等以上の能力を有するものと認定した者でなければならない。
イ 第二十七条第一項の規定による技術検定その他の法令の規定による試験で許可を受けようとする建設業の種類に応じ国土交通大臣が定めるものに合格した者又は他の法令の規定による免許で許可を受けようとする建設業の種類に応じ国土交通大臣が定めるものを受けた者
ロ 第七条第二号イ、ロ又はハに該当する者のうち、許可を受けようとする建設業に係る建設工事で、発注者から直接請け負い、その請負代金の額が政令で定める金額以上であるものに関し二年以上指導監督的な実務の経験を有する者
ハ 国土交通大臣がイ又はロに掲げる者と同等以上の能力を有するものと認定した者
建設業法15条2号イロハ
建設業法15条2号イについて
建設業法15条2号イは長々と書かれていますが、要するに「資格」や「検定」のことです。
先ほど掲載した「技術者の資格(資格等コード番号表)」に書かれています。そちらを確認してください。
表の「◎」が特定建設業の専任技術者になれる資格・検定です。
また、指定建設業(土木一式工事、建築一式工事、電気工事、管工事、鋼構造物工事、舗装工事、造園工事)に関しては、特定建設業の許可を受ける場合、原則として「◎」の専任技術者が必要となります。
建設業法15条2号ロについて
建設業法15条2号ロは、以下の3つのセクションに分けることができ、以下の①~③の要件にすべて該当するとき、要件を満たすことになります。
①建設業法7条2号イロハ(前述)のいずれかに該当すること
②元請けとして4,500万円以上の工事(平成6年12月28日以前であれば3,000万円以上、昭和59年10月1日以前であれば1,500万円以上)を受けていること
③上記②の工事において、2年以上の指導監督的な実務経験を有していること
簡単に言うと、「一般建設業の専任技術者になることができ(①を満たす)、元請けとして規模の大きな工事を受注したことがあり(②を満たす)、その工事で2年以上、技術面で現場を仕切っていた経験がある」ということです。
※建設業法15条2号柱書(黄色マーカー部分)にも規定されていますが、指定建設業の場合は上記①~③を満たしたとしても特定建設業の専任技術者にはなれません。
※「指導監督的な実務の経験」とは、建設工事の設計または施工の全般について、工事現場主任または工事現場監督等の立場で工事の技術面を総合的に指揮監督した経験のことを意味しています。
建設業法15条2号ハについて
建設業法15条2号ハは、「国土交通大臣がイ又はロに掲げる者と同等以上の能力を有するものと認定した者」と規定していますが、これは主に2パターン存在します。
以下の①または②のいずれかに該当すれば、特定建設業の専任技術者の要件を満たすことになります。
①海外での工事経験を有する者で、実務の経験について国土交通大臣の個別審査を受けて認定された場合
②指定建設業7業種について、過去に特別認定講習を受講し、同講習の効果評定に合格または国土交通大臣が定める考査に合格した場合
※①の国土交通大臣の個別審査は、国土交通省不動産・建設経済局国際市場課あてに申請することになります。
※②の特別認定講習や、考査は過去の法律の改正の時に経過措置として講じられたもので、現在新規で受講することはできません。
確認書類
いくら「実務経験があるから専任技術者になることができます!」と言ったところで、役所には信じてもらえません。
役所は良くも悪くも書面主義なので、客観的に実務を積んできたことを証明する書類が必要になります。
必要書類は、申請する先の役所毎に違うので手引き等でしっかりと確認する必要があります。
滋賀県では以下の①資格・経験確認書類と②常勤確認書類が必要です。ケースごとに分けて説明します。
(1)所定学科卒業者等のケース(建設業法7条2号イ)
次の①と②が両方とも必要です。
①卒業証書等(写し)または合格証明書(写し)
②実務経験証明書[様式第9号]と契約書等(写し)
(2)10年以上の実務経験を有するケース(建設業法7条2号ロ)
実務経験証明書[様式第9号]と契約書等(写し)
(3)資格・免許を有するケース(建設業法7条2号ハ、同法15条2号イ)
実務経験が必要な資格・免許の場合は、次の②の書類も必要です。
①合格証明書(写し)、免許証等(写し)または監理技術者資格者証(写し)
②実務経験証明書[様式第9号]と契約書等(写し)
(4)2年以上の指導監督的実務経験を有するケース(建設業法15条2号ロ)
上記(1)~(3)までのいずれかに該当し、かつ次の(ア)または(イ)のいずれかの書類が必要です。
(ア)①指導監督的実務経験証明書[様式第10号]と契約書等(写し)(記載した工事すべて)
②建設業許可通知書または許可証明書(写し)
(イ)監理技術者資格者証(写し)
(5)国土交通大臣特別認定のケース(建設業法15条2号ハ)
認定書(写し)と監理技術者講習修了履歴がわかるもの(直前に受講した監理技術者講習の有効期間が満了する前に受講していることが必要)
※必要な実務経験の年数は、要件によって異なるので注意が必要です。
要件 | 実務経験証明書 | 契約書等 |
資格免許(1年以上の実務経験が必要)の場合 | 1年分の記載 | 1年分 |
資格免許(3年以上の実務経験が必要)、所定学科卒業等(大学等)の場合 | 3年分の記載 | 1年分 |
所定学科卒業等(高等学校、中等教育学校)の場合 | 5年分の記載 | 2年分 |
実務経験のみの場合 | 10年分の記載 | 3年分 |
※「契約書等」とは、実務経験証明書に記載した工事に係る「請負契約書」、「発注者からの注文書」(ない場合は「発注者証明書」)を意味します。
他にも専任技術者の常勤性を示すための確認書類も必要になります。
常勤性を示すための書類については、以下のコラムで解説していますので、是非ご覧になってください。
目次から、専任技術者の項目へジャンプしてください。
専任技術者についてのよくあるQ&A
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経営業務の管理責任者と専任技術者の兼任はできますか
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同一の営業所内であれば問題ありません。
経営業務管理責任者と専任技術者の両方を満たすことができれば1人で許可を取得することが可能です。
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資格を他の営業所(会社)で使っているのですが、自分の営業所(自社)で専任技術者になれますか
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そのままでは専任技術者になることができません。専任技術者の専任性に反するからです。
おそらく他の営業所(他社)で専任技術者か、主任技術者、監理技術者などの資格者として登録されているケースかと思います。
この場合は、他の営業所(他社)での登録を削除してもらってから申請しなければなりません。前職の職場の対応が悪く、削除してもらえない場合は役所と折衝する他ありません。
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宅建免許の取引士や管理建築士との兼任はできますか
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同一の法人や個人で、同じ営業所所在地であれば専任技術者との兼任は可能です。
ただし、同じ所在地であっても別法人の専任技術者になりたい、ということであれば不可になります。
専任技術者についてのまとめ
本コラムでは、専任技術者について詳細に解説しました。
専任技術者の要件は、経営業務の管理責任者の要件と並んで、非常に重要な要件です。
建設業許可申請を行う場合、「経営業務の管理責任者」と「専任技術者」のどちらかの要件を満たせず、申請することができないパターンが大半です。
様々な書類が必要になるので書類は大切に保管し、手引きを熟読してから申請するようにしましょう。
手続きに自信がない場合には、建設業許可専門の行政書士へ相談するのが良いでしょう。