建設業の業種|左官工事業とは?詳細を徹底解説!
左官工事って具体的にどんな工事が含まれるんだろう?
何となくのイメージはあるけれど、具体的な工事や許可取得のために必要なことが分からない…
一口に『左官工事』といっても、内容は様々です。
このコラムでは、左官工事業の定義を確認し、具体的な工事名を挙げて解説していきます。
また、左官工事業の許可取得のために必要な要件も確認していきますので、是非最後までご覧ください。
左官工事業とは?
左官工事
モルタル工事
モルタル防水工事
左官工事業とは、「工作物に壁土、モルタル、漆くい、プラスター、繊維などをこて塗り、吹付け、または貼り付ける工事」のことを指します。
こて塗りは左官工事の代表例であることはイメージが付きやすいですが、防水モルタルを用いた防水工事も左官工事業の一環として行うことができます。
左官工事業の具体例を確認しておきましょう。
左官工事業の具体例
・左官工事:建物の床や壁などを、こてを使って塗り仕上げる工事
・モルタル工事:「モルタルセメント塗り」とも呼ばれており、こてを用いて壁や床の仕上げや床の下地塗りを行う工事
※モルタルとは、セメントと砂を水で練り合わせた建築材のこと
・モルタル防水工事:モルタルに防水材などを混ぜた建築材を床や壁、天井などに施工し、漏水を防止する防水層を作る工事
・吹付け工事:建築物に対してモルタルなどを吹き付ける工事
※吹付ける材料によって、左官工事業と塗装工事業に分かれますが、左官工事では主にモルタルを吹付けます。
・とぎ出し工事:グラインダーなどにより、人造石などを磨く工事
・洗い出し工事:玉砂利やガラスなどをセメントに混ぜたものを塗り付け、玉砂利などが浮き出すようにセメントを刷毛などで洗い出して仕上げる工事
上記以外の、例えば「ラス張り工事」や「乾式壁工事」についても、左官工事を行うための準備作業として、当然に左官工事業に含まれると考えられています。
※「ラス張り工事」:モルタル仕上げのための下地金網を張る工事
※「乾式壁工事」:モルタル仕上げのために石膏ボードで壁を作る工事
また、「吹付け工事」の中には、「左官工事」に該当するものと「とび・土木・コンクリート工事」に該当するものがあるので注意が必要です。
具体的には、「左官工事」における吹付け工事は、建築物にモルタルなどを吹き付ける工事のことを意味しており、「とび・土木・コンクリート工事」における吹付け工事は、法面処理などのためにモルタルや種子を吹付けることを意味しています。
このコラムでは名前が挙がっていませんが、他の工事も内容や工法によって左官工事業に該当することもあります。
左官工事業の許可取得のための要件
建設業の許可を取得するためには、前提として「経営業務の管理責任者」の要件を満たしている必要があります。
「経営業務の管理責任者」については左のコラムで詳細を解説していますので、詳しく知りたい方は是非ご覧になってください。
ここでは、左官工事業の専任技術者について詳しく見ていきます。
許可取得のために持っておきたい資格
「経営業務の管理責任者」の要件をクリアしている場合、以下の資格者がいれば、左官工事業の許可を取得することができます。
資格者等一覧
[技術検定]
- 一級土木施工管理技士(合格後、実務経験が3年必要)
- 一級土木施工管理技士補(合格後、実務経験が3年必要)
- 二級土木施工管理技士【種別:土木・鋼構造物塗装・薬液注入】(合格後、実務経験が5年必要)
- 二級土木施工管理技士補【種別:土木・鋼構造物塗装・薬液注入】(合格後、実務経験が5年必要)
- 一級建築施工管理技士(※)
- 一級建築施工管理技士補(合格後、実務経験が3年必要)
- 二級建築施工管理技士【種別:建築・躯体】(合格後、実務経験が5年必要)
- 二級建築施工管理技士【種別:仕上げ】
- 二級建築施工管理技士補(合格後、実務経験が5年必要)
- 一級造園施工管理技士(合格後、実務経験が3年必要)
- 一級造園施工管理技士補(合格後、実務経験が3年必要)
- 二級造園施工管理技士(合格後、実務経験が5年必要)
- 二級造園施工管理技士補(合格後、実務経験が5年必要)
[技能検定]
- 左官(2級の場合は、実務経験が3年必要)
[補足]
・(※)の資格を有していれば、特定建設業の専任技術者になることもできます。
・二級建築施工管理技士の合格証に何も書かれていなければ、「建築」の合格証です。
「躯体」と「仕上げ」の場合、カッコ書きで合格証に明記されています。
許可取得のための資格がない場合
こちらも「経営業務の管理責任者の要件」を満たしていることが前提となりますが、資格者がいなくても専任技術者になることができます。
基本的に2パターンのなり方があるので、確認しておきましょう。
実務経験のみの場合
実務経験のみで専任技術者になろうとする場合、実務経験が10年必要です。
この10年の実務経験は、左官工事業の実務経験でなければならないので注意が必要です。
こちらのコラムでは専任技術者について詳しく解説しています。
専任技術者についての詳細な情報が知りたい方は、合わせてご覧ください。
実務経験と学歴の場合
実務経験の他に一定の学歴があれば、10年の実務経験を5年または3年に短縮することができます。
学歴として、主に「高校卒業」、「大学卒業」、「専門学校卒業」が想定されています。
以下に表としてまとめておきますので参照してみてください。
卒業した学校 | 学 科 等 | 短 縮 年 数 |
高校卒業 | 土木工学(農業土木、鉱山土木、森林土木、砂防、治山、緑地又は造園に関する学科を含む。) または建築学に関する学科 | 10年→5年 |
大学卒業 | 〃 | 10年→3年 |
専門学校卒業 (高度専門士・専門士) | 〃 | 10年→3年 |
専門学校卒業 (上記以外) | 〃 | 10年→5年 |
専門学校を卒業されている方で、高度専門士または専門士の称号をお持ちの方は、大学卒業と同じ扱いとなります。
称号をお持ちでない方で、専門学校を修了された方は、高校卒業と同じ扱いとなります。
左官工事業の許可所得に関するQ&A
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実務経験を証明する場合に必要な書類は何ですか
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実務経験を証明するための疎明資料として、一例ですが以下のようなものが挙げられます。
・実務経験証明書に記載した工事に係る請負契約書
・発注者からの注文書
・発注者証明書
申請する自治体によって異なるので、必ず「手引き」を確認するようにしてください。
自治体によっては、請負契約書や注文書がない場合、請求書の控えとそれに対応する入金額が分かる通帳の写しを求められることもあります。
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左官工事の許可しか持っていないのですが、他の工事が含まれていても問題ありませんか
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左官工事業に付随して他の工事(例えば、大工工事やとび土木工事など)を請け負うことは、建設業法上何ら問題ありません。
ただし、複数の工事が含まれた工事では、金額の割合に応じて中心となる工事が判断されるので注意が必要です。
例えば、左官工事(工事金額350万円)に付随して、大工工事(工事金額200万円)ととび土木工事(工事金額50万円)を請け負ったとします(合計金額600万円)。
この場合、金額からして大工工事の金額の割合が一番大きいので、左官工事が中心の工事と判断されます。そして、上の例の場合、「600万円の左官工事を請け負った」と考えて問題ありません。
つまり、複数の工事が含まれる工事(2以上の業種)において、中心となる工事(1業種)だけの工事と考えても良いということです。補足ですが、上記の例では、結果として500万を超えることになるので、「左官工事業」の建設業許可(中心となる工事の許可)が必要になります。